2010年9月6日月曜日

大待宵草(おおまつよいぐさ)


   太陽が 沈み そこはかとなく 涼しい風が 吹く 夕暮れ時。

   その宵を待って 花ひらき 翌朝 ひっそりと萎む 黄色の花。

   不思議な 体内時計を持つ 魅惑的な花。


   太宰 治 は 「富嶽百景」で、”富士には 月見草が よく似合う”と

   書いたが、その月見草は [オオマツヨイグサ]  と言われる。

   ”待てど 暮らせど 来ぬ人を 宵待草の やるせなさ・・・・・・・・・”と

   詠った 竹下 夢二。    

   両者とも 夢二の絵のように 、儚げで 美しい女(ひと)を 想う。


   今から 37,8年前 私は 門司の 大里に 住んでいた。

   その当時、門司には 九州鉄道の本社があり、 大里の町には 国鉄の

   官舎が 立ち並んでいた。まさに 国鉄のお膝元だった。

   鹿児島本線、下関への山陽本線 の上下線、貨車・・・・・・と 頻繁に

   列車が 往来していた。

   夏の長い黄昏時、ヨチヨチ歩きの 息子の お気に入りの散歩は

   鉄道線路の 金網越しに、 行き来する 列車を 眺めることだった。

   線路わきには 黄色の重たげな 花をつけた 大待宵草が、夕陽を

   浴びながら、華やぎの時を 今か、今かと 待ちわびていた。

   門司駅 近くなので、汽車の動きは 緩慢だ 。時折 運転手が

   常連の見物客に 気前よく ポッポーと 汽笛を 鳴らす。

   息子は それが嬉しくてたまらず、その汽車に向って 「ポッポ、ポッポ!」と

   手を振りながら、私を 振り返る。 その弾けるような プチプチ笑顔。


   私の [ オオマツヨイグサ ]  は 幼い息子の 笑顔だ。

   それにしても 私は あの時、美しく咲いた 大待宵草を 見たのだろうか。

                           (写真は くじゅう連山に咲く花 より)

19 件のコメント:

  1.  太宰治 竹下夢二は愛しい人を思い オオマツヨイグサをながめたのでしょう。
    たかようじさんは オオマツヨイグサを眺めて 幼き息子さんの姿を懐かしむ。いいですね。

    花を眺めていると 以前眺めた情景を思い起こすことしばしばあります。和ませてくれます。

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  2. shuuterさん
    この土、日 東京在の息子が帰省していました。
    半年ぶりです。
    丁度 その2日間に BS ハイビジョンで
    門司港駅を基点の 生番組「BSデジタル号」が
    放映されていました。
    そこで あの 懐かしい情景を 思い出して
    書いてみました。少々 気恥ずかしいですが。

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  3. 『ブルートレーンで行く九州一周の旅』の
    TVと息子さんの帰郷で、心にしみるしみる
    いい話、そこに『おおまつよいぐさ』ががか
    らまってくる。拝見して ほのぼのあったか。

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  4. 子どもの笑顔
    いつでも鮮明に思い浮かべられる宝物
    SLと美しい母子と待宵草
    映画のワンシーンを彷ふつさせる情景に
    ちょっと うるうる・・・です。

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  5. ぶらり爺さん
    あったかコメント ありがとうございます。
    自分にとって 大切な思い出を ”花”を
    題材に 綴る 「のうのう日記」
    これからも よろしくお願いいたします。

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  6. sumisumiさん
    子供が いくら 大人になっても、
    「 子供が 子供の時代 」は
    親にとって、大切な思い出。
    その想いを すべて語るのは 無理ですが、
    一つずつ 何かの機会に 伝えていくのも 
    親の務めかなあ と思います。

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  7. オオマツヨイグサの色に似て黄色の文字が光ります。たかようじさんの繊細な気配りに頭が下がります。私も息子にしてあげられなかった事、孫にしてあげるのも嬉しいものです。

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  8. 信徳さん
    コメントありがとうございます。
    お子様にしてあげられなかった分、今
    ”じいじ”として頑張っていらっしゃるご様子、
    ほほえましく、羨ましく 思います。
    そういう優しい関係を大事にしていきたいですね。

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  9. こんにちは。
    太宰治の「富士には 月見草が よく似合う」の句碑があるのは知っていましたが、実際に見たのは一昨年でした。
    2009.9.28にアップしてありますので、お時間があるときに覗いて見て下さい。
    句碑の傍にはオオマツヨイグサでは無くてオカトラノオが咲いていて、時の流れを感じました。
    太宰が彼を慕う山崎富栄と共に身を投げた玉川上水は家から割りに近いのですよ。
    桜桃忌には今でも三鷹の禅林寺に太宰のファンが集まるのでしょう。
    以前の句を一句
    「酒一斗 濁流(みず)にそそがむ 桜桃忌」杏秋

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  10. kako狸さん
    コメントありがとうございました。
    kako狸さんの 多才ぶりは わかっていましたが、
    作詞の次が、俳句とは、素晴らしいですね。
    どちらも 言葉を 大事に紡いでいくのですもの。
    2009.9.28 の記事に 見当たらないので、
    お手数ですが、又 教えてくださいね。 

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  11. ごめんなさい。
    2009年だと思っていたら、2008年でした。
    失礼致しました。
    もう随分前だったのですね。

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  12. kako狸さん
    句碑のそばの「オカトラノオ」の見事ですね。
    それにしても ”いもだんご”の美味しそうなこと。
    思わず、ゴックン でした。(笑)
    kako狸さんは 推理小説 お好きでしたよね?
    太宰治 生誕100年 連がりで、松本清張の
    記念館は 北九州市に あります。家から 車で
    5分のところ。 ぜひ、一度 お訪ねくださいませ。

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  13. そう言えば、線路脇によく咲いていましたね。いつしかセイタカアワダチソウにとって代わられてしまいましたが。
    男の子は鉄道を見るのが好きですね。私の孫も陸橋の上から飽かずに眺めていた時期がありましたよ。

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  14. オオマツヨイグサが息子さんの満面の笑顔となって花開いたのですね。
    それ以上に見事なオオマツヨイグサの花はないかもしれませんね。
    夕方になるとするすると蕾をほどいて、咲く瞬間ぽんと音立てるように開くマツヨイグサの花、大好きです。

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  15. 長さん
    一時は「セイタカアワダチソウ」が
    猛威を振って 大変でしたね。
    ご多分にもれず、線路わきの「オオマツヨイグサ」も
    とって代わられました。
    お孫さんとぜひ 門司港へお出かけください。
    操縦体験もできる「九州鉄道記念館」。
    関門海峡を眺めながらの 「トロッコ列車」も
    運行中ですよ。
    あれ、私いつの間にか 北九州市のPR係に
    なってしまいました。(笑)

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  16. ひとえさん
    長い間仕事をしていて、宵に花開く「オオマツヨイグサ」
    を ゆっくり愛でる余裕は その後 ありませんでした。
    何年か前 偶然 旅先で出会い、嬉しかったことを
    思い出します。
    ” 咲く瞬間の 音 ”を聞くのは宿題にしておきます。

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  17. こんばんは。
    「大待宵草」に纏わる息子さんとの思い出。母親だけにしか分からない情愛がほとばしっていていい話ですね。
    その光景が眼に浮かんできます。この記事を今は大きく成長された息子さんが読んだらどう思われるでしょうね。

    ついでに、私のこの花との思い出となると、太宰治の「富嶽百景」ではありませんが、“利尻岳には月見草がよく似合う”です。大待宵草が咲く朝、利尻岳に登った夏のことを思い出しました。
    またまた、たかようじさんに触発されてか、早速、その風景「利尻嶽百景」をブログ・トップの写真に今日載せてしまいました。庵主さまは、ひとの言動にとても影響を受けやすい純なおのこなのです。(笑)

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  18. 庵主さま
    「利尻岳には 月見草が よく似合う」
    ブログトップの写真で 納得です。
    庵主さまの写真は いつ見ても 情感漂って
    素敵ですね。
    「認知症の予防」と称して、パソコン勧めて
    くれたのは 息子。ブログも大賛成。
    ”自由に のびのび 思うまま書くのが一番”
    と言った手前”おいおい”と苦笑いしているでしょう。

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  19. こんばんは。
    再度のお訪ねでのコメント有難うございます。
    先ほどコメントに対するレスポンスしておきました。
    2007年6月3日の記事です。

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