2011年8月31日水曜日

鳥兜(とりかぶと)

                  ( 「植物園へ ようこそ 」 より )
キンポウゲ科  トリカブト属     日本・中国・朝鮮半島  原産 

名の由来は 雅楽の奏者が 錦製の鳳凰をかたどった冠をつけていて

それが ”鳥 兜”と よばれており、この花の形が 似ていることより。

英国では ”ヘルメット・フラワー”と 呼ぶ。

この花の 複雑な形は マルハナバチに 花粉を運んでもらうための

手の込んだ 装置 とか。





「 不美人な女性を 俗に  ”ブ ス” と いうが、ブスの語源となった

植物こそが、 美しい トリカブトである。

ブスとは ”附 子” と 書き、 トリカブトの 塊根のことである。

トリカブトは 猛毒を持ち、  誤って 口にすると、 神経系の機能が

麻痺して  無表情になる。

この表情から ”ブ ス” と 言われるようになった。」

   ( 稲垣栄洋著 「 残しておきたい ふるさとの野草 」 より )





今から 18年前の話。 北アルプスに 初挑戦、  白馬岳だ。

大雪渓を これまた 初めての 軽アイゼンを ガシッ、ガシッ と

いわせての雪渓歩き。 おっかなびっくりの足元だが、心はルンルン。

涼風を 心地よく 身体に 感じ、 雪渓を 登りつめると

そこは お花畑が 一面に広がる  葱平 (ねぶかっぴら)。

色とりどりの 美しくも 愛らしい 花々が、 優しく  風と 戯れ

短い夏を 謳歌していた。

その中で 不思議な魅力を 放っている 青紫色の 個性的な花

それが “ ミヤマトリカブト ”。

この花による 殺人事件が 記憶に 新しい時期だったので、

ゾクゾクしながら  見入ってしまった。

” トリカブト ” の花は こちらの思惑など どこ吹く風かと 澄まし顔

妖艶な 美しさを 漂わせ、 私を とりこにした。









 

2011年8月4日木曜日

紅蜀葵(こうしょっき)

       ( 長さんの デジファイル 「 花色々トップ 」 より )


アオイ科   ハイビスカス属   北米  原産

別名 ” 紅 葉 葵 (もみじあおい)” 葉が 紅葉の葉に似ることより。




近所の公園に ” 紅 蜀 葵 ” が、ギラギラした太陽のもと、青い空に

ひときわ 大きな 深紅の 5弁の花を 輝かせ、 咲いている。

茎と葉が 華奢なのに この 紅い花の なんとまあ 華やかなこと。

つぼみの時は、 まさに  深窓の 令嬢の  感あり。

成人すると  鮮やかな花色と 妖艶な笑みで、 人を 惹きつける。

風が吹けば  バレリーナのごとく、  強靭な身体を しならせ、

いつも 笑顔を 絶やさない、  八月の花の 人気者。

花言葉は 「 温和 」 「 穏やかさ 」 と、 やや 意外。



          [   八 月  ]

       八月は  赤い月    燃える月

       赤は    聖色

       色彩の世界の   尖頂にあって

       白黒の世界とを    つなぐ色で

       あって    色でない。

       ( 朱夏ー 東アジアでは  朱が 夏を 象徴する )

                     「 書道家  石川九暢 より 」




この [ 八月 ] の 見事な描写は ”紅 蜀 葵” を 讃えるのに

ふさわしい と、 一人 悦に入っている。





     

2011年7月19日火曜日

立葵(たちあおい)

       ( 「 長さんの デジファイル」 花色々トップ より )
  アオイ科   アルテア属

  トルコ原産種と 東ヨーロッパ原産種の 雑種とされる。

  人類が 利用した 最古の花の 一つ。

  イラク北部で 6万年前の ネアンデルタール人が 死者に

  手向けた 花が 出土した。

  おそらく インド、ミャンマーから 「 山のシルクロード 」を

  経て  中国・四川省に  伝播。

  唐代以前は [ 牡丹 ]が 台頭するまでは [ 蜀葵(しょくき)]

  の 名前で 一番の 名花と された。

  日本へは 平安時代の 唐葵から 江戸時代に 立葵に。   

          ( 湯浅浩史  「花おりおり」より 抜粋 )




  2007年 トルコへの旅。

  紀元前2世紀 ローマ時代の古代都市ヒエロポリスの遺跡。

  その下に 広がる 高さ100mに及ぶ 階段状の 石灰棚。

  石灰質を含んだ温泉水が 何千年もの 長い年月をかけて

  創り上げた 純白の 棚田、 <バムッカレ>

  ローマ帝国の温泉保養地であり トルコ語で <綿の宮殿> 

  を  意味する。

  純白の石灰棚が 夕日に照らされ、ブルーのグラデーション

  へと 刻一刻 変化し、 たとえようのない 神秘的な美しさ。

  この 魅惑的な景観に 圧倒され、 静かな 祈りにも 似た

  沈黙の世界が 広がる。




  ヒエロポリスの野には 色とりどりの花が 咲き乱れていた。

  白、 薄紫色、 紫、 淡紅色、 紅色 ・ ・ ・ ・ ・ 

  目を惹いたのは すらりとした、” タチアオイ ” の花。

  日本でみるより やや小ぶりだが、 優美な  淡紅色の花。

  立ち去りがたい想いの私に ” 立 葵 ”は  悠久たる時を

  ふわりと 包み込み、柔らかな 微笑を 投げかけてくれた。

  幻想的な 光景と 気品漂う 花を  今も 思い出す。

  爽やかな 風と  ともに。

2011年7月9日土曜日

山梔子(くちなし)

                 ( 植物園へ ようこそ  より )


アカネ科   クチナシ属   中国・ 東南アジア・ 日本  原産

梅雨時に  純白の  美しい  六弁花を  咲かす。

雨上がりには 魅惑的な 甘い香りが  あたり一面に  漂う。

ツヤツヤした 緑の葉も   鮮やかだ。

秋深く、  結実した実は  赤みのある 黄色に  色づく。

熟しても  口を開かないことからの  名との   一説あり。





清純な色気の クチナシの花も 王朝歌人には あまり取りあげて

もらえず、 もっぱら 果実を煎じて  着色料や 染料に 用いた。

くちなし色の 色見本を 眺めていると 「 くちなしの実で 染め

あがった色は、 いかにも 新鮮で  ひな鳥のように 初々しい」

との 染色家の 志村ふくみさんの 文章が 浮かぶ。





タヒチの シンボルの花は < ティアレ ・ タヒラ >。

クチナシの 一種である。  タヒチの女性は 水浴びの後、その

花で  髪を 飾る。  ココナツミルクに 花を 浸した モノイは

タヒチに 古くから伝わる 化粧水。 天然の ヘアークリームで

あり、 スキンクリームであり、 万能薬だ。

           ( 湯浅 浩史著   花の履歴書より  )





そういえば、 ゴーギャンの 有名な 「タヒチの女たち」の 絵で

女性が 髪に 挿していたのは この花ではと、 調べると、

ピンポーン・ 当たり!

俄然、 あの絵が 身近に 思えてくるのが、 可笑しい。



でも 私の 一番の お気に入りは、 映画  ” 旅 情 ” の

ヴェネチア・サンタルチア駅での  ” クチナシの 花 ”。

甘くて せつない、 あの シーンに  かなうものはない。






2011年6月30日木曜日

露草(つゆくさ)



                  ( 植物園に ようこそ より )


ツユクサ科   ツユクサ属   原産地   日本など東アジア

茂り始めると 茎を 長くのばし、 茎の 節々から 根を出し、

どこまでも 伸びていく ” 露 草 ”

あまりの 繁殖力に 驚かされ、 引き抜きたくなるが、

あの 透明感のある 瑠璃色の花に であうと、 つい 放任。

青い花のなかでも 一際 めだつ、 造形の妙に あふれた

美しさに  心 奪われる。





つぼみは 二つ折りになった 網笠のような 苞葉の中に 数個

あり、 1個ずつ  順に 開く。 その様子が 帽子をかぶった

ように 見えることから、 別名 ” ボウシバナ ”

”ツキクサ” とは この花で布を青く刷り染めたことに由来する。

染めた色は 「 露草色 」。 淡いブルーの 「 はなだ色 」 もだ。

現在 友禅の下絵書きは 変種の大帽子花が 使われている。





露草の 花びらは 丸く、 大きく、 耳を ピンとたてており、

2本のシベが  おいで、おいでと  手招きする。

残りのシベは 鮮やかな黄色の衣をまとい、この花の 魅力的な

アクセントと なっている。 「 この奥に 甘い蜜があるんだよ 」

と  虫たちを 誘っているかのようだ。





花は 早朝に開き、 午後には閉じる。

ツユクサの ユニークサは  午後にある。

花弁の中は ドロドロに溶け、 成分は吸収されて 次の花へ

回される。 リサイクルの 花である。

         ( 湯浅浩史 「花おりおり」 より )





外見の愛らしさと 本性のたくましさと これほど違う花も珍しい。

” 露 草 ” は 独立心の強い、 才気あふれた 花である。









2011年6月19日日曜日

紫陽花(あじさい)

                       ( maechan  より )
  アジサイ科  アジサイ属  原種は 日本原産の ガクアジサイ
  別名は   「 七 変 化 」   「 八 仙 花 」
  六月は  あじさいの 季節。
  雨に濡れながら、美しく咲く 紫陽花の花は  梅雨の 風物詩。
  この花の咲いている周りだけ、 仄かに 明るく、静かながらも
  華やいだ 空気が 漂う。
  目にも鮮やかな濃い藍、 浅い藍、 儚げな水浅葱、 純白・ ・
  どの色合いも  心を 透明にしてくれる。


  四つの花びらが 寄り添うように 咲く姿を 手毬花として
  愛らしいと 想う人、
  花が 開きはじめてから、 微妙に 色合いが変化するのを
  移り気と 嫌う人、  さまざま。
  私は  清楚な趣の ” 額 紫 陽 花 “ が  好き。 


  ガクアジサイの 小さな花は 初めは 固い ツンツン つぼみ。
  ” 愛いやつだ”と ちょっかいかけても 知らん顔、 無口だ。
  やがて ヒソヒソ話するように 一つずつ 花が そっと開いて
  いく。  中から シベが ちょこんと のぞいている。
  そのうち、 パキッとした 五弁の花びらの真ん中から、シベが
  得意満面の 笑みを 浮かべて 伸びあがってくる。
  花たちが パチパチ 弾けるように、 そう、  あっという間に
  ペチャクチャ おしゃべりな 女の子の集団に 変身するのだ。


  大らかで優美な 装飾花に 守られるように、 小さな 可憐な
  花の軍団が 咲き誇り、 美しい ”額紫陽花”の 出来あがり。
  


  

2011年6月9日木曜日

ドクダミ

                     ( 植物園へようこそより )





    昨年 6月9日より 始めました 「 のうのう 日記 」

    おかげさまで ブログ開設 1周年と なりました。


    友人との メール延長線と なにげに始めた ブログが

    一年も続いたことに 自分自身が 一番驚いています。

    皆様の 温かい 励ましにも似た コメントに  支えられ、

    画像の借用に 支えられ、 ここまで 参りました。

    改めて 感謝いたします と 共に  今後とも どうぞ

    よろしく お願い申し上げます。




  ” ド ク ダ ミ ”  ドクダミ科   ドクダミ属   東アジア原産

  「 毒矯(た)め 」 に 由来の名。 矯めは 改め、直すこと。

  毒消しや 食あたりに 使ったとされる。 十種の 薬効があり

  「 十 薬 」 の 名も ある。

  4枚の 白い 花びらに見えるは 苞。 その上に 淡黄色の

  繊細な小花が 穂状につく。

  一見は 一つの花に見える 集合花だ。

  葉は ハート形で 表が 暗い緑色、裏が 暗い赤色と 個性的。


     どくだみや    真昼の闇に   白十字

                           川端 茅舎

  梅雨は  静かな心を 取り戻す時。 秘めたる心を蘇らせる時。

  この季節に なると 小さいころ 虚弱体質で いつも 身体に

  腫れものが できていた私に、祖母が ”ドクダミ”の葉を あぶり

  化のうした患部に 当てて 治療してくれたことを  思い出す。

  人によっては 嫌われる 独特の匂いも、 私にとっては

  祖母の 愛情と 重なり、  懐かしく  いい香り。

  花ことばは [ 白い 追憶 ]


  ” ド ク ダ ミ ” は  生命力 旺盛でありながら 、神秘の力を

  持つ、  どこか 不思議な魅力の 薬草である。