2011年5月31日火曜日

都忘れ(みやこわすれ)

                ( 写真は 季節の花 300 より )

  キク科   ミヤマヨメナ属    日本  原産

  ” 都 忘れ ” は 小さい花ながら 凛として 気品あふれる花。

  江戸時代より 茶花、 庭の下草として栽培され、切り花に向く。

  紫、 薄紫、 白、  薄紅 ・ ・ ・ どの色の花も  素敵。

  この花を見るたび 一昨年亡くなられた 作家 庄野潤三氏の

  本の 一節を 思い出す。



  ”みやこわすれは咲き出すと いつまでも 次から次へと咲いて

  くれる。 この花を分けてくださった 歯医者の 植木老先生の

  「みやこわすれが咲き出すと 仏さまのお花を 切らさない」 と

  いわれたのを 思い出す。  ありがたい花だ。”



  そうなのです。 見かけは愛らしいが  なかなか 強い信念と

  体力を 持っているのです。

  切り花にしてもずいぶんと長い間 その美しさを維持してくれる

  花 なのです。





  「貝がらと海の音」 にはじまり、「ピアノの音」 「庭のつるばら」

  「鳥の水浴び」  「山田さんの鈴虫」 「うさぎのミミリー」 ・ ・

  夫婦の晩年を主題に 花や鳥、 旬を飾る食べ物、 巡りいく

  季節など、 静かな喜びで 満ちあふれた日々を 淡々と

  綴った 随筆集、 いや  一連の 小説。

  ここには 少しずつ 少しずつ 時間が たって  小さな変化が

  あって  でも変わらない世界が  ある。

  庄野氏の本を読むと いつもしみじみ 温かい心で満たされる。




  ”みやこわすれ” は どの本にも 同じような台詞で 登場する

  常連さんで (ほかには 浜木綿、すみだの花火、ブルームーン

  など)  私には  なじみの花である。

  ”みやこわすれ” は 私の心を おだやかにしてくれる花だ。




  




 

2011年5月24日火曜日

花筏(はないかだ)



              ( 写真は 季節の花 300 より 

  桜の花が散り、水面に 帯状に 漂い流れる 様を 花筏 と

  称す。

  とある 春の夕暮れ、 桜が 降りしきる  京都 哲学の道。

  疏水の 川幅いっぱいに 悠然と 流れゆく  桜、 桜 、桜

  最後のきらめきを 見せながらの  優美で 静かな 行進。

  唖然として  時の過ぎるのも 忘れて 見入った。

  この夢のような 光景に 再び まみえることは ないだろう。




  ” 花 筏 ”     ミズキ科   ハナイカダ属

  その名の由来は  葉を 筏に 見立て、 筏の上に 乗った

  花 と いう 意。

  ”ハナイカダ ” なる 木が あると 聞き、  興味津津。

  風雅な ネーミング。  はたして いかなるものや? 

  日々  恋心は  募りながら、  逢えたのは つい先日。

  なんとまあ、 めったに お目にかかれぬ  変わり者 と

  お見受けする。  よくいえば  実に  個性的なのだ。 

  山アジサイに似た 美しい緑の葉の 真ん中に、 淡緑色の

  小さな 花が  チョコンと  鎮座ましましている 花姿。

  可愛くって、 おかしくって、  たまらない。 

  まるで  一寸法師の 世界なのだもの。( お椀を 舟に

  お箸を  櫂にして ・ ・ ・ )


  この 小さな  若緑の  舟の   ” 花 筏 ”

  流れ  流れて   どこまで  行くのやら




     花 筏    みどりの風に    煽(あふ)らるる

                      鈴木  房枝






  

2011年5月16日月曜日

矢車菊(やぐるまぎく)

                   ( 写真は News@KEK より )
  キク科  ヤグルマギク属   ヨーロッパ南東部  原産

  和名は 花弁の 切れ込みが  「 鯉のぼり 」 の 竿の先に

  ついている 矢車に 似ているところからの 由来。

  属名 「 Centaurea 」 は ギリシャ神話に出てくる 半人半馬の

  怪物 ケンタウルスに よる。

  英名は ” コーンフラワー ”  麦畑に よく咲くことから。


  ” 矢車菊 ” は 親しい花だが、 華麗な 歴史を 持つ。


  古代エジプトでは 青い花は 魔よけとされ、”ヤグルマギク”は

  王のミイラの胸を飾った。(ツタンカーメンの黄金の棺より発見)

  ドイツでは 「カイゼル(皇帝)の花」 と呼ばれ 、国花となった

  こともあり、 ドイツ女性の 瞳の色にも 例えられる。




  又、 その青色の美しさから、最高級の サファイアの色味を

  「コーンフラワー・ブルー(ヤグルマギクの青)」 と して

  引き合いに出され、 マリー・アントワネットも 好んだらしい。

                   ( ウィキペディアより 抜粋 )




  まだ 驚くには 当たらない。


  赤いバラと 青いヤグルマギクは 全く違う色にも かかわらず、

  シアニジン型アントシアンという  同じ 色素を 持っている。

  これまで 多くの人が 挑戦してきた 「 青い薔薇 」・ ・ ・

  同じ色素を持つ ヤグルマギクは たった4個の金属イオンと

  フラボンの お陰で、 綺麗な 青色を 出しているという。

  不可解で 実に おもしろい 世界だ。

       ( 英科学雑誌ネイチャー2005.8.11掲載 より 抜粋)



  数々の 驚くべき エピソードに 包まれた ” 矢車菊 ” 

  それなのに  なんとまあ、  伸びやかで  優しいことか。

  爽やかな 五月の 風に  細長い 身体を しならせながら、

  筒状の 花たちが 頭を寄せ合い、 笑い、 さざめいている。

  野の花のような 素朴な美しさながら、 不思議な 魅力を 

  漂わせている。



 



 



2011年5月5日木曜日

烏野豌豆(からすのえんどう)

                    ( 写真は maechan より )


マメ科   ソラマメ属     オリエントから 地中海   原産

別名  ヤハズエンドウ (葉の先端が くぼみ、矢ハズ形になる)

茎の先から、巻きひげを出してクルクル巻き、 紅紫色の 蝶形の

可愛い 花を 咲かせる。

花後、 さやが熟すと 真っ黒になるところから ”カラスノエンドウ”

の 名と なる。


” カラスノエンドウ ” は、 美人三姉妹の  長女。 


三女は  “ スズメノエンドウ ”。

長女に比べると  茎も 葉も 共に細く、 華奢で、 花も 勿論、

小さく、 白っぽく、 地味である。

 

次女は ” カスマグサ ”。

烏の 「カ」 と 雀の 「ス」 の 間の 「マ」、と いうことで

” カスマグサ ”。   つまりは   中間型。

自分だけ エンドウの名が ついていないため、青紫の美しい花を

咲かせるも  姉妹に 強烈な ライバル心 あり。

あまり、 表に出ないが、 中々の  しっかり者である。


” スズメノエンドウ ” は、 上の二人を 見て 育ったせいか、

上手に 人生を 渡ることが でき、 かなりの  頭脳派である。

自分の身を守る方法として 体内に 抗菌や 抗酸化作用のある

物質を 含み、 病原菌や 害虫を  防ぐ。 


それに引き換え、” カラスノエンドウ ” は 長女としての 自意識

過剰で、 自分に 自信があり、 他を うまく 使うことを 考え、

抗菌物質のかわりに、甘い蜜を作りだした。しかも 花の中だけで

なく、葉の付け根からも 蜜を出しているのだ。 この蜜を 武器に

アリを ボディガードにと 利用したつもりが、 結果として アリの

手痛い 逆襲に 遭い、 アブラムシの 天下と なってしまった。


世の中、 なかなか うまく いかないものだ。

  ( 「残しておきたいふるさとの野草」 稲垣栄洋 著 参照 )



だが、 カラスノエンドウは  どうやら 花が 咲く 前に すでに

受粉(つぼみ受粉)しているそうで、 これには 参った、参った。



*  この記事は ひとえさんの 「 おもひぐさ 」 2011.04.21より

    ヒントを 得ました。 スズメノエンドウ カスマグサ の画像も

    お楽しみください。