2011年7月19日火曜日

立葵(たちあおい)

       ( 「 長さんの デジファイル」 花色々トップ より )
  アオイ科   アルテア属

  トルコ原産種と 東ヨーロッパ原産種の 雑種とされる。

  人類が 利用した 最古の花の 一つ。

  イラク北部で 6万年前の ネアンデルタール人が 死者に

  手向けた 花が 出土した。

  おそらく インド、ミャンマーから 「 山のシルクロード 」を

  経て  中国・四川省に  伝播。

  唐代以前は [ 牡丹 ]が 台頭するまでは [ 蜀葵(しょくき)]

  の 名前で 一番の 名花と された。

  日本へは 平安時代の 唐葵から 江戸時代に 立葵に。   

          ( 湯浅浩史  「花おりおり」より 抜粋 )




  2007年 トルコへの旅。

  紀元前2世紀 ローマ時代の古代都市ヒエロポリスの遺跡。

  その下に 広がる 高さ100mに及ぶ 階段状の 石灰棚。

  石灰質を含んだ温泉水が 何千年もの 長い年月をかけて

  創り上げた 純白の 棚田、 <バムッカレ>

  ローマ帝国の温泉保養地であり トルコ語で <綿の宮殿> 

  を  意味する。

  純白の石灰棚が 夕日に照らされ、ブルーのグラデーション

  へと 刻一刻 変化し、 たとえようのない 神秘的な美しさ。

  この 魅惑的な景観に 圧倒され、 静かな 祈りにも 似た

  沈黙の世界が 広がる。




  ヒエロポリスの野には 色とりどりの花が 咲き乱れていた。

  白、 薄紫色、 紫、 淡紅色、 紅色 ・ ・ ・ ・ ・ 

  目を惹いたのは すらりとした、” タチアオイ ” の花。

  日本でみるより やや小ぶりだが、 優美な  淡紅色の花。

  立ち去りがたい想いの私に ” 立 葵 ”は  悠久たる時を

  ふわりと 包み込み、柔らかな 微笑を 投げかけてくれた。

  幻想的な 光景と 気品漂う 花を  今も 思い出す。

  爽やかな 風と  ともに。

2011年7月9日土曜日

山梔子(くちなし)

                 ( 植物園へ ようこそ  より )


アカネ科   クチナシ属   中国・ 東南アジア・ 日本  原産

梅雨時に  純白の  美しい  六弁花を  咲かす。

雨上がりには 魅惑的な 甘い香りが  あたり一面に  漂う。

ツヤツヤした 緑の葉も   鮮やかだ。

秋深く、  結実した実は  赤みのある 黄色に  色づく。

熟しても  口を開かないことからの  名との   一説あり。





清純な色気の クチナシの花も 王朝歌人には あまり取りあげて

もらえず、 もっぱら 果実を煎じて  着色料や 染料に 用いた。

くちなし色の 色見本を 眺めていると 「 くちなしの実で 染め

あがった色は、 いかにも 新鮮で  ひな鳥のように 初々しい」

との 染色家の 志村ふくみさんの 文章が 浮かぶ。





タヒチの シンボルの花は < ティアレ ・ タヒラ >。

クチナシの 一種である。  タヒチの女性は 水浴びの後、その

花で  髪を 飾る。  ココナツミルクに 花を 浸した モノイは

タヒチに 古くから伝わる 化粧水。 天然の ヘアークリームで

あり、 スキンクリームであり、 万能薬だ。

           ( 湯浅 浩史著   花の履歴書より  )





そういえば、 ゴーギャンの 有名な 「タヒチの女たち」の 絵で

女性が 髪に 挿していたのは この花ではと、 調べると、

ピンポーン・ 当たり!

俄然、 あの絵が 身近に 思えてくるのが、 可笑しい。



でも 私の 一番の お気に入りは、 映画  ” 旅 情 ” の

ヴェネチア・サンタルチア駅での  ” クチナシの 花 ”。

甘くて せつない、 あの シーンに  かなうものはない。