2010年11月5日金曜日

小紫(こむらさき)




   私が あまりに美しいゆえの ねたみからか、先ごろより 素性を


   とやかく申す輩が おりまして、 なにやら ” 紫式部 ” の 隠し子と


   まで  うわさされて おりまする。




   私の名は  ” 小 紫 ”


   平安の御代、 宮中には  才気煥発な 「 枕草子 」 の  清少納言、


   流麗な物語で、  皆を とりこにした  「 源氏物語 」 の  紫式部、


   そして  女流歌人として  抜きん出た  「 和泉式部日記 」 の 


   和泉式部 と、  綺羅  星のごとく   輝いて おりました。


   私の母は  恋多き 和泉式部でございます。 私の本名は ” 小式部内侍 ” 


   母と区別するため、 ” 小 紫 ” と 称していたので ございます。


   私は 母より 美貌とともに 歌の才能をも 受け継いだのでございます。


   少女時代は  淡紅の花で  優しげな  地味な子で  ございました。


   長ずるに したがって、 緑の玉となり、 薄ぶどう色~ 紫~ 本紫~ と


   まるで  [ 宝石箱 ]  と 賞される、  輝く、  美しき  [ 珠 ]  と


   なったので  ございます。


   残念なことに  27歳の若さで  この世を  おいとま したために 


   皆が  あわれに 思い、  せめてもの  よすがに、 この [ 珠 ] に


   ” 小 紫 ”  と  名付けたので ございましょう。




   百人一首に  納められた  私の 和歌を  詠んでいただき、


   いにしへの  姿を  偲んで  くださりませ。


          大江山  いく野の道の  遠ければ


                   まだ ふみも見ず  天の橋立




      *  続編 ” 紫 式部 ”  ご期待 下さいませ。


12 件のコメント:

  1. 小紫のなり立ち 楽しく拝読いたしました。
    27歳でこの世を去っているのですか。今は この紫の玉となって登場されているのですね。
    小紫をながめる時 たかようじさんのブログの文を思い出すことにいたします。

    話し変わりますが 上の百人一首 は私には縁が深いのです。
     父は天の橋立 母は大江山 の出身です。
    正月のカルタの時はこの札だけは他人には取らせませんでした。
     余計な話で すいません。
     

    返信削除
  2. こんばんは。
    なるほど、たかようじ先生の解説でよ~く分かりました。
    我が家の庭の“小紫”さんのことを“紫式部”さんだと、間違えて云う人が多いのですね。困っています。
    “小紫”さんの歌、意地悪定頼を返歌も出来ぬほどギャフンと言わせた歌ですね。丹波の大枝山も丹後の大江山も登ってきましたよ。
    サボリ癖が出てしまいました。気まぐれ訪問お許しください。

    返信削除
  3. 良いですね。きっとあの世から和泉式部が拍手をしていますよ。
    続編・紫式部の後に、白式部の話も聞かせてください。

    返信削除
  4. 小さな薄いピンクの花が、秋に小さななんとも言われぬ
    紫色の実をつける。奥ゆかしい!!!

    小紫研究室では「マイクロ波ロケットを宇宙へ」と研究、
    宇宙へ小紫さんを迎えに? 楽しい夢!!!

    返信削除
  5. shuuterさん
    百人一首の中に 思い入れの強い 特別な 一首が
    あるなんて 素敵な ことですね。
    その お話に 少々ですが、私の拙い 物語も 絡む
    事が 出来たなんて  望外の 喜びです。
    ありがとうございます。

    返信削除
  6. 庵主さま
    歌の 背景と言うか 情景を 読みといて いただき
    ありがとうございます。 
    藤原 定頼の 意地悪に対し、「 母さんの力を
    借りなくとも 自力で 大丈夫!」と 言い返した歌、
    スカッとしますね。 
    今なら、きっと セクハラで 訴えられますね。 (笑)

    返信削除
  7. 長さん
    褒めていただいて 嬉しいです。
    ありがとうございます。
    ”白 式 部 ”の お話、ちらりとは 頭を かすめた
    のですが・・・。
    長さんに 背中を 押されて、頑張ってみます。
    さて さて どんな 出来に なるやら。

    返信削除
  8. ぶらり爺さん
    >小紫研究室では 「マイクロ波ロケットを・・・」・
    壮大な 宇宙の ロマンを 感じます。
    お話の 発想が 楽しいですね。
    いかにも ぶらり爺さんらしく、 夢が あります。
    ”小紫 ”を 可愛がって戴き、ありがとうございます。

    返信削除
  9. おはようございます。
    小紫の母君は和泉式部でしたか。
    たかようじさんの文章に引き込まれました。
    さもありなんと思わせる名文ですね。
    愉しませて頂きました。
    コムラサキを見るたびに思い出すことでしょう。
    有り難うございました。

    返信削除
  10. kako狸さん
    紫の美しい実が ”小紫 ””紫式部 ”と
    知った時から、ウズウズ してしまって、 
    こういう 物語に なりました。
    拙い文章に お付き合い いただき、
    本当に ありがとうございます。
    御ほめを 励みに 紫式部、白式部と 
    物語を考えて まいりましょう。

    返信削除
  11. ゆふいん玉露米です。写真の件ですが、定年退職後の趣味で撮影をしていますので、私の画像でよければご自由にお使いください。これからしばらくは、花の撮影はできませんがカメラが趣味ですから暇があれば何時も徘徊しています。コメントの受けつけは昨日OKにしました。文章が下手なので、返答がうまくできませんからOFFにしていました。これからもお付き合いください。

    返信削除
  12. ゆふいん玉露米さん
    私の わがままを お聞き届け戴きまして、感謝 
    いたします。どうやって 画像の 借用願を出したら
    いいのか、 それなりに 頑張ったのですが、上手く
    いきませんでした。 今回の コメント欄を見た時は
    やっと ご連絡出来ると 嬉しくて、嬉しくて。
    ”くじゅうに咲く花 ”の 画像が、心に 響いて
    この写真さえ お借りすれば 素敵な 文章が 書ける
    気が したのです。(厚かましい話です)
    本当に ありがとうございました。
    今後とも よろしくお願い致します。

    返信削除