2010年10月22日金曜日

貴船菊 (きふねぎく)


   ある年の10月23日、 勇壮な炎が 夜空を焦がす 「 鞍馬の火祭 」 の

   翌日 早朝、  叡山電車で  鞍馬へ 向かう。

   色づき始めた 紅葉の 樹々の間を、 電車が ゆっくり 走り抜けていく。

   鞍馬の町は 祭りの熱気を まだとどめ 、煙のにおいが 立ちこめる。

   消火用の ホースから  水が ほとばしって  道路を 洗い流す。

   家々は みな 開き放たれ、 軽いざわめきが あちこちに ある。

   提灯を持ち、 裃姿の 世話役らしき方が、  挨拶に 廻られている。

   華やぎの余韻が  たっぷりで、  こちらまで 嬉しい気分。

   狭い ゆるやかな 坂道を  ぶらぶら 歩いていく。

   お目当ては 山奥の  鞍馬温泉、 露天風呂。

   北山の 山並に 囲まれて  静かで  のんびり 、いい湯だ。

   それから 由岐神社に戻り、 鞍馬の山を越えて 貴船まで 歩く。

   ロープウェイを 横目に、  朱塗りの 本殿金堂に  参拝し、

   ゴツゴツの 木の根道を下り、 うっそうと 生い茂った  樹々の中を

   大杉権現~ 奥の院魔王殿~ 貴船神社 へと  低山ハイク。

   貴船神社は ひっそりとしていて  寂しい 雰囲気だったが、

   可愛い 貴船菊の 本家本元の お出迎えに、 口もとが ほころぶ。

   可憐な 八重の  紅の花。  気品ある 一重の  白い花。

   正式名は ” 秋明菊  ”   キンポウゲ科   アネモネ属。

   別名  ” ジャパニーズ・アネモネ ”  

   数の少ないのが 気になったが、 花の時期は 終わりかもしれない。

   貴船神社の 「 丑の刻 参り 」  「 五寸釘 」 の 話は 、山越えで 

   すっかり 冷え込んだ体には ブルブルもので お参りもそこそこに 退散。

   急いで 料理屋さんへ駆け込み、懐石料理と 熱燗の日本酒を 注文する。

   ほんわりと湯気の立つ 酒を 口に含むと、 冷え切った体に しみわたる。

   ほどよい疲れも 相まって、  酔いがまわる 心地だ。

   ああ、  極楽、  極楽 なり。


    ( 写真は 信徳さん 「想いのままに・・・」 より  2010.9.25 )

           http://51608230.at.webry.info/

12 件のコメント:

  1. キブネギク 庭で一斉に咲きはじめました。白の一重が多いのですが 少しピンクノ八重もあります。私も好きな花の一つです。

    9月の初めに貴船でクラス会があり川床料理を食べたこと思い出します。まだ暑さ厳しい時でしたが 天然のクラーにて 懐かしい話に花咲かせたことでした。

    鞍馬温泉につかり 口にするお酒 極楽 極楽 ですね。

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  2. 貴船菊を主題にこれだけの文章がかけるって素晴らしいです。文才のない私には真似ができません。

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  3. shuuterさん
    お宅の庭の ”秋明菊 ”拝見しました。(10月16日)
    美しく 咲き誇って いましたね。
    貴船の 料理屋は 「 ひろや 」 でした。
    貴船川沿いの 部屋から 美しい紅葉が 眺められ
    満足いく お料理でした。
    いつか 川床料理の 季節に 伺いたいものです。

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  4. 長さん
    長さんこそ いつも 楽しい 旅のお話 掲載されて
    いつの間にやら こちらも 同行している 気に
    させられます。
    でも 褒めていただくと  素直に 嬉しいです。
    鞍馬の旅(?)は  印象が 深かったので、
    こうして UP出来たことが 幸せです。 

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  5. 「秋明菊」~「貴船菊」~「貴船神社」
    ~「貴船の物語」と思いは続く・・・
    節分の始まりは、この神社からでしょうか、
    紅葉の綺麗な神社のようですね。

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  6. ぶらり爺さん
    貴船の 紅葉は モミジ だけでなく、カツラ、カエデ
    などの 広葉樹も 紅葉するので、 山 全体が
    紅葉するように 見えて 見事です。
    11月12日~30日まで 「 貴船 もみじ灯籠 」が
    催されますよ。叡山電車から眺める 紅葉のライトアップ
    と  貴船を 彩る もみじ灯籠。
    ぜひ 一度 行ってみたい です。

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  7. わたしも何度か貴船を歩きました。
    でも貴船菊は思い出の光景になく・・その時期に訪れたことはないのかもしれません。
    たかようじさんの文章にいざなわれて、また歩きたくなりました。
    人だけでなく色んなものが棲む地・・そんな気がします。
    貴船菊、大好きな花です。
    わが家でもささやかに白い花が咲いています。

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  8. ひとえさん
    貴船神社の境内には 期待していたより はるかに
    ささやかに 咲いていました。
    えっ、って 驚いたくらいです。その時は 貴船菊の
    盛りが 過ぎたと 単に 思ったのですが・・・。
    料理屋さんや お店の店先に 貴船菊が ありましたが
    見応えのある花は ありませんでした。
    残念ですね。 なんとか 花を増やす 取り組みをして
    戴きたいですね。

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  9. 微笑みかけてくれているような花に惹かれて貴船まで行き、海底火山の隆起によって生まれた鞍馬山の溢れる霊気、力強い木の根にただただ宇宙の不思議を感じた思い出。いつかまた、できれば「火祭」に行ってみたいものです。
    白野江植物園に行ってきました。目の前にひらひら舞う蝶に導かれて青い椅子のあるフジバカマの花のところへ戻りました。しっかりと蜜を吸いながら羽根を閉じたり、広げたり・・・・雨が止んで一人静かに物思う秋でした。

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  10. 悠ユウさん
    貴船菊は >微笑みかけてくれているような花・・で、
    愛嬌がありますね。
    私も いつか 鞍馬の火祭を、この目で見て、感じたい
    と思っています。
    今朝の新聞に 白野江植物園で  ”アサギマダラが 
    フジバカマに 戯れている ”写真が  掲載されて
    いましたね。 やっと 10頭の 立ち寄りとか。
    フジバカマの 見ごろは 後1週間、 ヤキモキする
    毎日です。

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  11. こんにちは。
    「鞍馬の火祭」には一度行ってみたいと思っておりますが、「秩父夜祭」同様、願い叶わずです。
    最近は特に人混みが嫌になってしまって。
    いけませんね。
    でもたかようじさんの素敵な文章に引き込まれ、一緒に歩いている気分になりました。
    懐石料理と熱燗のところで我に返りました。

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  12. kako狸さん
    驚かせて ごめんなさい。 ”旅には 酒 ”が 定番
    なのです。 いつまで  豪語できるやら。
    貴船への 同行者は 妹。
    二人とも 出張帰りの寄り道だったので 、山歩きには
    相応しくない 格好でしたが、ルンルン気分で 、闊歩。
    いい思い出に なりました。
    「秩 父 夜 祭 」 きっと 壮大な お祭りでしょうね。

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