あでやかで 鮮やかな 五弁の 紫の花。
誰をも 一目で 魅了する花 ” 紫紺野牡丹 ”
紫紺・・・ まさに 日本の 伝統色の ひといろ。
だが この花には、 和の色から にじみ出る 古風な趣が 感じられない。
どちらかというと ディープ・ロイヤル・パープル や パンジー などの
ビビッド・トーンの あっけらかんとした 紫 だ。
それもそのはず 原産地は ブラジル。
ビロードのような 手触りの葉は、 産毛でおおわれ、 じつに 毛深い。
紫の雄しべは 蜘蛛の脚のようで ”ブラジリアン・スパイダー・フラワー”の
異名あり。
( 詳しくは 庵主さま 「 青谷だより 」 2010年9月26日の記事をどうぞ )
牡丹の花に 似ていないのに なぜ ” 野牡丹 ”と 名付けられたのだろう?
[ 牡丹 ] は 唐の時代より 中国では [ 花の王 ] と 称され、
その華麗さで 他の花を圧倒し、 まさに 高根の花 である。
それに ひきかえ ” 野牡丹 ” の なんと 愛らしく、 庶民的なことか。
他の花のなかにあっては、目立って 派手で 人目を惹く。 が、 しかし
仲間内では 陰影というか 濃淡少なく、 個性的美しさを 競うと いう
点において やや 欠ける。 そのかわり 粒ぞろいの 美女軍団である。
やや うつむき加減の しとやかな風情は 「私 何にも 知りませんの」
と、純真無垢な 乙女の 色気を 感じさせる。
だが、 皆が カメラを構えて 花の中を 覗きこもうとすると、その顔に似ず
どすのきいた声で 「 あまり ジロジロ みるんじゃないよ 」 と、 一喝!
の 強さも しっかり 持っているのだ。
そのくせ、 これほど美しい花なのに 一日花 とは 惜しいと思う こちらの
気持ちを 汲んでいるかのように、毎日 次々と 新しい花を 咲かせてくれる
律義というか 優しさがある。
花は 単純ながら 性格は 複雑。 ゆえに 余計に チャーミングだ。
” 紫紺野牡丹 ” と 名付けた方は 異国情緒 たっぷりでありながら
日本的な美しさ、可憐さを 合わせ持つ この花を [ 日本の花 ] として
末永く 愛してほしい との 願いを 込めたのだろう。